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2007.12.01

NW短編「救援」

話数:1話完結
メインキャラ:グィード・ボルジア
ジャンル:妄想系
カップリング:なし
カラー:シリアス トーン:少し暗め
備考:柊蓮司と宝玉の少女<下>を読んでいたらなんだか書きたくなったしまった
   ので……。
   ネタバレになるほどの情報は入っていません。
   内容は『ウィザード達に追われる柊とエリス。二人を助けに来たのは意外な
   人物だった……』というものです。




NW短編「救援」~神の名の下に~

 そこは、一見質素な部屋だった。
 アラバスターの円柱に囲まれた荘厳な室内には、しかし調度品はほとんど無い。
 有る物と言えば大理石の床の上にソファーが一つ。
 だが、この部屋の主の名を知らぬ者は、おそらく世界中を探しても存在しないだ
ろう。
 ローマ聖王グレゴリオ・ビウス十一世。それがこの部屋の主の名である。
 その主は今、精緻な彫刻が施された受話器を手に何者かと会話を交わしていた。
「そうですか。……いえ、世界のためです。是非もありません」
 通話を終え受話器を降ろすと、聖王の口から深い溜息が漏れた。
「悪い知らせのようだな」
 ソファに掛けていた男が口を開く。
 聖王を相手に不遜な態度だが、グレゴリオも咎めようとはしない。
 男の名はグィード・ボルジア。敬虔な神の使徒にして聖王庁に所属する腕利きの
ウィザード。
 そして、聖王とは個人的にちょっとアヤシイ関係だったりもする。
「至宝エリスの抹殺が決定した」
「……そうか。アンゼロットの立場を考えれば、当然ではあるな。
 それにしても、世界の希望を一身に背負った聖女が、実は絶望の化身だったとは
 な」
「うむ。アンゼロット殿もずいぶんと気落ちしているようだ」
 聖王の沈痛な表情に、応えるグィードの顔にも陰がさす。
「だが、今一番辛いのはエリス君だろうがな」
ところで、と続ける
「あの娘は柊蓮司のパーティに居たはずだが?」
 言外の問いに、聖王は苦笑混じりに頷く。
「お前の想像通りだ。柊蓮司は現在、至宝エリスを連れて逃亡中だ。
 必要と有れば柊蓮司の排除も辞さないとのことだ」
「ふっ。それでこそ柊蓮司だな。だが……聖王庁としてはアンゼロットに従わざる
 をえんか」
 グィードの口調にも苦い物が混ざる。
「そのことだがグィードよ。お前はもうずいぶん休暇を取っていまい。そろそろ有
 給の消化をしてくれまいか?」
「む? この状況でか? だいたい話しが繋がっておらんぞ」
「だからこそだ。今年は特に困難な任務が続いていたからな。温泉にでも浸かって
 疲れを癒してきてはどうだ?」
「聖王よ、何を考えている?」
「いいや、別に何も。それより、日本ではそろそろ桜が咲く頃ではなかったかな?
 いや、まだ少し早いか」
 日本の部分を強調する聖王。
「…………なるほど。そう言う事か」
 納得したのか、ニヤリと人の悪い笑みを浮かべるグィード。
 ウィンクで答える聖王。
「土産には煎餅でも買ってきてくれ、マイハニー」
「ああ。楽しみにしているがいいマイスイート」

***

 深夜。
 人がいなくなった秋葉原は完全なゴーストタウンと化す。
 そんな静寂に満ちた街の中で、狭い路地裏を二人の影が駆け抜けてゆく。
 一人は抜き身の剣を携えた少年。もう一人は白い帽子を被った少女。
 言うまでもなく、世界の全てが敵に回ってしまった柊とエリスだ。
 ウィザード達の襲撃をかわしつつ、安全な場所を求めて走り回っていたのだ。
 何故エリスが世界を滅ぼすのか、どうすれば世界もエリスも救えるのか?
 ゆっくり考えたくとも、次から次へと刺客が襲ってくるのではのんびり悩んでい
る暇もない。
 それに自分はともかく、エリスの体力はもう限界だろう。
(ったく! どうにかしないと、マジでヤバイな。ん?)
 路地の先に、見知った男が立っているのが見えた。
「久しぶりだな、ボーイ」
「グィード・ボルジア……アンタまで来たのか」
 魔剣を構えるとエリスを庇い前に出る。
「そう慌てるな。私は別に戦うために来たわけではない」
 グィードは両手を広げて戦闘の意志がない事をアピールする。
「そうは言われてもな。こっちはたった今聖王庁の奴らとやり合ったばかりなんだ
 ぜ?」
「ほう、我が聖王庁が誇る銀十字騎士団。その最精鋭達の囲みを既に突破していた
 か。
 ところで、彼らは『星を継ぐ者事件』の際、赤羽神社の警護に当たっていた部隊
 なんだが……」
 その台詞に柊の顔が目に見えて引きつる。
「まさか、死人は出していないだろうな?」
「一応。重傷のヤツも居ない……と、思う」
 と、それまで2人の会話を聞いているだけだったエリスが疑問を口にする。
「あの、お二人はお知り合いなんですか? それに先刻の人達も……」
 その問いに、柊は目一杯渋い顔をして答える。
「まぁ、知り合いっつーか何て言うか……。いや、そんな事よりお前何しに来たん
 だよ!?」
「ふっ、生徒が困っているなら助けに来るのが担任というものではないか」
「お前が担任だった時間は三日もないだろ!?」
「何を言う。たった一日でも、いや数時間でも担任は担任だ」
「大体、おまえら聖王庁だってアンゼロットに協力してるんだろ!? なのに何で俺
 達を助けに来るんだよ!?」
「ふっ、確かに我ら聖王庁も世俗の中にある組織だ。組織同士の義理やらなんやら
 に縛られている事は否定できん。
 だがな、それだけが組織の全てというわけではない。
 それに、私は休暇中だ。聖王庁がどんな作戦を行っているか知らされてはいない」
「いま、騎士団の事言ってたじゃねぇか!」
 胸を張って言い切るグィードに、突っこまずにはいられない柊だった。

***

「さて、これ以上こんな所で漫才をやっているわけにはいかん。私が用意したセイ
 フハウスへ向かうとしよう」
「いいのかよ、俺達を助けて。ヘタしたら聖王庁だってヤバイ事になるんじゃねぇ
 のか?」
「見くびって貰っては困るな、柊蓮司。
 神の愛に限りなど無い。そして、我らは神の愛を体現する者だ。
 愛を知らぬ勇者に世界は救えん。だが愛を知る魔王なら世界を護る事だろう。
 我らは信じたのだ。エリス君こそ真実世界を救う切り札であると」
 グィードの言葉に、エリスは俯いてしまう。
「でも、私の力は……」
「エリス君。強大な力を恐れるのはもっともだ。だが、力はただ力だ。そこに善も
 悪もない。大切なのは、その力を何のために使うかだ。
 大丈夫。君が力を間違って使いそうになっても彼が止めてくれる。無論、私もな」
「そうだぜ。それにくれは達だってここには居ないけど、でもいつだって一緒にい
 るだろ?」
 そういうと、柊は0-Phoneに付けたスケート靴のストラップを掲げてみせる。
「うむ。愛は力だ、そして力は神だ、すなわち愛こそ神だ!」
「まて、その並び順は何かおかしくねぇか?」
 上手く言えないが、どこかがずれているような気がする。
「些細な事だ。全てイコールなのだから問題はない」
 きっぱりと言い切るとグィードは二人を先導するように歩き出す。


 深い闇の中 夜明けには、まだ遠い…………



●後書き
 最後までお読み頂き有り難うございます。
 なんというか、グィードのハジケッぷりが足りませんねぇ(-_-)ムウ
 真面目モードのみで行くか、天さん風味増量モードで行くか悩んだんですが、結
 局どっちつかずで、中途半端になってしまいました。 orz
 小説では出番がなかったグィード。アニメでは出てきてくれるといいなぁ。

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受信: 2007.12.01 05:48

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